wood  美瑛・富良野  wood

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朝4時半頃に目を覚ました。晴れているだろうか。期待してルーフテントの入り口のファスナーを開け、外を覗く。雨は降っていないようだ。しかし外には一面に霧が立ちこめている。あーこりゃだめだ。天気がよかったら旭岳に登ろうと思っていたが、これでは何の景色も見えないだろう。落胆したが、仕方ない。山の天気が悪い場合は美瑛の丘や富良野の観光と決めている。そしてひょっとしたら旭川の方まで行けば天候も回復しているかもしれない。ルーフテントを収納し、運転席に座る。後ろのベッドの3人はまだ寝ている。車をパーキングエリアから高速道の本線へと向けた。
1時間半程で道央道の終点旭川鷹栖のインターチェンジに到着。ここからは一般道である。霧は完全になくなっている。しかし山の方は厚い雲に覆われている。心は決まった。今日は美瑛と富良野の観光だ。旭川を素通りし国道237号線を美瑛の方に南下していくことにする。
旭川市街の道路は広い。1車線の道だが優に2車線分ぐらいの幅がある。おそらく冬に雪が積もって路肩が狭くなることを考慮しているのだろうが、今は夏である。当然雪はない。こんな広い道のどのあたりを走ったらよいのか迷ってしまう。右折するときは右に寄ればいいし左折するときは左に寄ればいいのは分かる。でも直進するときはどのあたりを走ればいいのだろうか。仕方なしに車線のど真ん中を走ってしまったが、これって地元民には結構迷惑なことだったのだろうか。
信号も本州のものと違うものがある。縦型信号だ。電車の信号のように赤黄青が縦に並んでいる。縦にしている理由は分からない。やっぱり雪と関係あるのだろうか。ちなみに普通の横型信号もちゃんとあって、縦型信号と使い分けられているようである。
さて郊外の道路に出るとここにも違いがある。路肩にある道の端を示す下向き矢印マークだ。これは信州など雪の多い地方で見られるものであるが、京都人には珍しいものには違いない。起き出してきた奈菜が「あれはなに?」と聞くので、「悪い子供がおったら頭の上に落ってきて突き刺さるんよ。」と説明したが信じたかどうか。
JR西聖和駅あたりを通り過ぎたところぐらいで「パッチワークの路」の看板があり、それに従って右折、田舎道に入っていく。「パッチワークの路」の由来であるが、美瑛のあたりはうねうねとした丘に、牧場や色々な野菜を栽培している畑が一面に広がっていて、あたかもパッチワークのように見えるところから名付けられたらしい。
さてパッチワークを目指して田舎道を走っているうち低い峠を越える。越えたとたん霧の海に突入してしまう。10m先がやっとという霧にびっくりしつつ、目をこらせてゆっくり車を進める。右手に駐車場が見えてきた。とりあえずそこに車を駐車する。よく見ると駐車場から道路を挟んだ反対側に一本の木がそびえている。形からするとセブンスターの広告に使われた「セブンスターの木」らしい。ガイドブックによるとこのあたりの景色も良いらしいが、やっぱり霧で何も見えない。山どころかパッチワークも見えないのか・・。がっかりである。
しばらくぼーっとしていると、気のせいか霧が少し薄くなってきたような・・。ひょっとして霧が晴れていくのではないだろうか。そこで霧が晴れるのを待つ間朝食をとることにした。車で10分程の美瑛の駅前に行き、そこにあったコンビニで食料を調達、セブンスターの木のところに舞い戻る。霧はさっきよりだいぶん薄くなってきている。パッチワークが見えだした。いい景色になりつつある。
朝食のために車からイスとテーブルを下ろし、カップラーメン用の湯を沸かす。気温は15度くらいだろうか、少し肌寒い。子供達にはトレーナーを着せてある。 photo1
ゆっくり朝食をとっている間に霧はほとんどなくなってきた。十勝の山も見えるようになってきた。おなかのふくれた子供達は虫網と虫かごを持って走り回っている。私は景色をじっくりと楽しむ。やっぱりこの風景は本州と違う。北海道にやってきた実感がわいてくる。
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美瑛の朝

朝食風景

セブンスターの木のそばで記念写真をとっていると観光バスが1台やってきた。今までの静かな世界が急に騒がしくなる。また1台やってきた。有名なところだけあって、観光ルートになっているようだ。こうなるとゆっくりしていられない。急いでイスとテーブルを片づけ、セブンスターの木を後にした。
この後は美瑛の丘の散策である(といっても車でだが)。まずは「親子の木」、次に「ケンとメリーの木」、その次は「北西の丘展望台」、さらに「マイルドセブンの丘」と周辺の美しい丘。これら名所を結ぶ道を牛や馬などを横目に見ながらゆっくり車を走らせる。 photo3

美瑛の丘

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美瑛のパッチワーク

ケンとメリーの木

さて美瑛の丘を一回りし、次の目的地である富良野に向かう。一旦国道237号線に出て再び南下を始める。途中奈菜が小樽の寿司屋からずっと持っていたカニの鋏を走行中に車の窓から落としてしまい、「戻って、戻って」と大泣きするというハプニングがあったが、11時頃に上富良野に到着した。
富良野といえば誰でも真っ先に頭に浮かぶものはラベンダーだろう。私もそうである。そこでまずは上富良野で一番大きいラベンダー畑、「日の出公園」に向かった。日の出公園は小高い丘のようになっており、その西斜面(町から見て表側)にたくさんのラベンダーが育ててある。ちなみに裏側はキャンプ場になっている。ラベンダーはそろそろ盛りを過ぎる時期のようである。駐車場から近い側の斜面のラベンダーはもう枯れているようだ。しかし頂上の展望台に近い側のラベンダーはまだまだきれいに咲いている。
駐車場から展望台までは結構急な坂道だが奈菜が先頭をきってずんずん登っていく。これは直前に食べたアイスクリームの威力なのか・・。奈菜もちょっと前まで「だっこ、だっこ」と言っていたのにたくましくなったものだ。駿一もよく歩く。めったなことではだっことは言わない。パパと母ちゃんはどこに行くのも楽になった。 photo6

展望台から

展望台まで登ると視界が広がる。見渡す限りとはいえないが、ずいぶん広い。ラベンダーの花は今を盛りと咲いている。ここの公園の良いところは畑の中に入ってもいいことだ。ラベンダーの花の中での記念撮影ができる。早速家族の写真を撮る。もう一つ良いところは観光バスがほとんど来ないため、比較的すいていることだ。そのためゆっくりできる。 photo7

ラベンダーの花

photo8 といってもずっとラベンダーを眺めているわけには行かない。またまた奈菜を先頭に坂を下っていく。奈菜は花が好きらしい。ラベンダー以外にも花壇にきれいな花がいっぱい植えてあるのだが、それらを楽しそうに眺めながらおりていく。ちなみに奈菜の将来の夢は「お花屋さんになること」らしい。

花壇の前で

さて時間は昼過ぎ、お昼ご飯を食べよう。上富良野駅から西へ車を走らせ、ガイドブックに載っていた手作りソーセージのレストランへ入った。注文したのはソーセージカレーとソーセージドリア、ソーセージの盛合わせというソーセージづくしである。おまけにビールとくれば、こりゃおいしくないわけがない。ふと外を見ると、あっ雨が降っている。それも夕立のようなかなり激しい降りである。タイミングが良かった。見学中だったらずぶ濡れだ。でもこの雨やんでくれるかな。
雨はご飯を食べ終わる頃にはすっかり上がったが、天気はやっぱりどんよりとしている。次は中富良野町にあるここも有名なラベンダー畑の「ファーム富田」である。ここは・・すごい人である。観光バスも駐車場に入りきれず路上駐車しているほどである。当然人の数もすごい。げっそりとした気分になる。追い打ちをかけるようにまた雨が降ってきた。もういいや、日の出公園でラベンダーはいっぱい見たし・・。と自分に言い聞かせ車に戻ることにした。花はやっぱり静かに見たいものです。
次は富良野市の「ふらのワイン工場」。目的は当然ワインの試飲だ。しかしこの日は工場のラインは止まっているし、試飲できるワインも2種類だけと少なかったので、早々に立ち去ることにした。
次に訪れたのは、「富良野チーズ工房」である。目的は当然チーズの試食である。となりに「富良野アイスミルク工房」があるためか、ここはワイン工場より訪れている人が多い。試食ができる売店もにぎわっており、「メゾン・ドゥ・ピェール」という白カビタイプのチーズや、変わったところで「セピア」というイカ墨入りチーズなどが試食できる。子供達が食べられるようなノーマルなプロセスチーズなどは置いていない。母ちゃんは手当たり次第にぱくぱく食べている。おいおいそれは試食の域を越えてるだろう。 photo9
ここには無処理の牛乳も置いてあった。これは試飲がないのでお金を出して購入する。飲んでみて驚いた。クリームみたいである。でもおいしいかと聞かれると「好みによるでしょう」という感じである。案の定牛乳と聞いて飛びついた子供達も全然飲めなかった。
さてそろそろ夕方である。今夜のねぐらを決めなくてはならない。ねぐらを決める条件は第一にトイレである。次に水場である。昔から私は野宿の時はこの二つで寝る場所を決めていた。だから昨日のように高速道路のパーキングはよく利用する。あとキャンプ場や駅前もよく利用した。しかし今回は北海道である。北海道と言えば食べ物と温泉である。そこで今回はねぐらを決める第一条件は温泉が有るところとした。
昼前に立ち寄った日の出公園のそばに公衆温泉がある。でも富良野市から上富良野町まで15kmほど戻らなければならないが、他には良さそうな場所がないので日の出公園まで戻ることにする。「日の出公園キャンプ場」を確認に行くと、トイレも水場も駐車場のすぐそばにあり、問題なし。今夜のねぐらはここに決定する。 photo10

日の出公園キャンプ場

photo11 さて温泉である。ガイドブックで調べていたとおり、すぐ近くに「フラヌイ温泉」という温泉がある。このあたりは温泉地というわけでもないので、浴場はここだけである。建物も普通の鉄筋づくりである。湯も普通の透明であるし、硫黄の匂いもしない。でも入ってみるとさすがに温泉である。すぐに体が温まり汗がどっと吹き出てくる。湯温は40度くらいだろうか、ぬるい湯が好きな私にとってちょっと熱めに感じる。今日は奈菜とペアを組んでいる。奈菜も熱い湯が苦手で、小さい時はちょっと湯が熱かったら絶対に中に入らなかった。でも今は、ちょっと体を湯につけては上がり、ちょっと体をつけては上がりを繰り返して、徐々に体を湯船に沈めていく技を身につけた。
すっかり暖まった後は食事である。北海道ガイドというネット上の口コミ情報から近くのスーパーの中に回転寿司があるという情報を仕入れたので、そこに向かう。なんてったって北海道である。回転寿司でもうまいに違いない。
その店に入ってみるとがらーんとしている。他に客はいない。一瞬たじろぐが気を取り直して席に着く。他に客がいなくたって、寿司はぐるぐる回っている。適当に食べ始める。が、結果は大したことがなかった。やっぱり昨日の寿司とはかなりの開きがある。噂では北海道の回転寿司はうまいと聞いていたのだが、やっぱり店を選ぶ必要があるみたいだ。 まあ値段は安くついたから良かったけど・・。
食事が終わってせっかくスーパーに来たのだからと買い物をする。買うのは明日の朝食である。 パンを適当に仕入れて、スーパーの駐車場で車内ベッドのベッドメーキングをし、キャンプ場の駐車場へ向かう。
明日の天気予報は曇り。 晴れてくる兆しはない。雨がぽつぽつ降ってきた。とりあえずもう寝よう。おやすみなさい。
でも今日はそれですまなかった。夜中11時頃か12時頃か、突然雷が鳴り始め、激しい雨が降り出した。雨はまだ我慢できるとしても、雷はいやである。私はルーフテントで寝ている。ルーフテントは車高2.1mのデリカの上で広げているのでてっぺんは4mにちかい。周りのテントよりは空に近いわけである。半分眠っている頭で、「ルーフテントの材質はFRPだけど、FRPって雷が落ちるんだろうか」「確か留め金が金属だったなぁ。これはやばいな」「このテントより高い木が近くにあったかなぁ。そっちに落ちてくれないかなぁ」などと色々考えていた。
さすがに心配になったのか、母ちゃんが呼びに来た。私も渡りに船と、車の中に移動することにした。車内ベッドの下段に、私と、かあちゃん、駿一と3人寝ればさすがに狭い。我慢して寝ようとすると奈菜が上段ベッドから落ちてきた。寝相の悪いやつだ。また上段ベッドに押し上げる。
1時間ほどうとうとしただろうか、雨は小降りになって、雷は聞こえなくなっている。雷さえなくなれば、ここは狭いだけである。再びルーフテントに戻った。これでゆっくり寝られそうである。今度こそお休みなさい。

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