wood  霧多布  wood

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いつものように6時頃目が覚める。北海道にいるのも今日をいれてあと3日。明日の晩には札幌に着いていなければならない。だとするとそろそろ西へ戻り始めなければならない。今晩は釧路あたりまで戻れればいいだろう。それならば、今日は知床峠を越えて霧多布に行ってみよう。
さて天気はどうだろう。朝食を食べに食堂へ行き、窓から空を見たところ、昨日よりはちょっとましな天気のようだ。しかし知床の山並みはやっぱり雲に覆われていて、さっぱり見ることができない。今日は知床峠を越えていく予定であるが、この分では雲の中を走っていくことになるだろう。残念だが仕方ない。
ホテルを後にし、知床峠に向かう。昨日は左(知床五湖方面)に行った分岐を曲がらずまっすぐ進み、知床横断道路に入る。知床横断道路に入って間もなく、周りは霧に包まれ始める。霧の中を道はぐんぐん高度を上げていく。昨日の鹿との遭遇がまだ印象に残っているのであたりをきょろきょろ見回しているが、今日は鹿は見あたらない。
photo1 もうすぐ峠だろうか、あたりが少し明るくなったような気がする。いや気のせいではない。高度を上げるに従って、霧が薄くなってきている。どうやら雲の上に出てきたらしい。すうっーと目の前の霧がなくなる。なくなると同時に羅臼岳の勇姿が目に飛び込んできた。背景はきれいな青空である。まさか羅臼岳をこんなにきれいに見ることができるとは思ってもいなかったので、正直なところびっくりした。

羅臼岳

まもなく知床峠の駐車場だ。霧の中だったら通過しようと思っていた場所だが、こうなったら止まらないわけにはいかない。駐車場に車を入れる。空はきれいな青空で雲がほとんどない。久しぶりの太陽が気持ちいい。雲は自分たちより少し低い高度に立ちこめている。写真を撮る。久しぶりに写真のバックに青空をいれることができた。ひょっとしたら北海道に来て以来初めてではないだろうか。
photo2 photo3
羅臼岳の姿をじっくり味わった後、 ウトロと反対側の羅臼方面へ下っていくことにした。下り始めるとまたすぐ霧の中である。つかの間の晴れた世界であった。でもあきらめていた羅臼岳を見ることができたので満足である。峠を下っていくと程なく霧はなくなっていく。どうやらオホーツク側より太平洋側の方が少し天気がいいみたいである。まもなく羅臼の町である。
三原の大きいばあちゃんへのおみやげは、この羅臼の町で、有名な「羅臼昆布」を買うことにする。ガイドブックに載っていた羅臼漁協直営の店「海鮮工房」を探す。なかなか見つからずにうろうろした末、漁協に直接場所を聞いてやっとたどり着くことができた。
その店はプレハブ建ての小さな店である。分からないのも無理はない。 中に入ってみると、昆布だけではなく羅臼の名産品が色々置いてある。なんと冷蔵庫の中にはクリオネが瓶に入れて置いてあった(これは売り物ではないが)。変わったところでは「羅臼昆布だし」という羅臼昆布の濃縮だしが置いてある。これは羅臼漁協オリジナルで、他の店では売っていないとのこと。そこで、おみやげとして羅臼昆布とこの濃縮だしを何本か買うことにした。ついでに酒のつまみになりそうな「かにっこ」と呼ばれるカニの内蔵の塩漬けも購入した。
羅臼の町を出発し、海岸沿いの道に出たとき、海の向こうにうっすらと大きい島が見える。この方向に見える大きい島と言ったら国後島しかない。現在のところロシアの島である。こんなに近いところに外国の島があるというのは不思議な感じである。子供達にも知っている範囲で北方領土の事を説明しておいたが、きっと理解できずに今頃忘れていることだろう。
さてここからは、一気に霧多布まで行こう。距離は100km以上あるが、北海道では平均時速60kmも可能なので、2時間以内に着くことができるだろう。海岸沿いの国道244号(通称国後国道)を快適に走る。道内のナンバーを付けた車は時速80km以上のスピードでどんどんとばしていく。
車は野付半島を横目に見ながら走る。トドワラで有名な岬であるが、あそこに寄っていると時間がかかるので、今回はパスすることにする。風蓮湖のあたりから道は内陸部を走る。北海道らしい広々とした風景が窓の外に広がっている。北海道は車に乗っているだけで満足できるところである。
風蓮湖を過ぎてしばらく行くと、根室と釧路との分岐にさしかかる。霧多布は釧路方面だ。根室には今回行けそうにないが、次来るときには必ず寄りたいと思う。さらに車を進めるとやっと霧多布方面への曲がり道である。国道44号(通称根釧国道)から左へ曲がり、海の方へ向かう。空をみるとこのあたりは青空の部分が多い。日もだいぶ射すようになってきた。青空を見るとなんだかうれしくなってくる。
海岸線が見えてきた。このあたりの海岸線は、たしか「渚のドライブウェー」といって砂が細かいために堅く締まり、車が走れるようになっていたはずである。勘を頼りに海岸に続いていそうな細い道に入り込む。なんとか砂浜に出ることができた。確かにここの砂浜は固い。車で走るのに何の不安もない。波打ち際に車を寄せて止める。入り江のようになっている対岸には霧多布岬が見える。天気がよいと、景色もきれいに見える。
足下を見るとこのあたりの波打ち際には貝殻がたくさん落ちている。子供達は早速貝拾いを始めたが、きれいな貝は落ちていない。そこで貝拾いはそこそこにして、海沿いに車を走らせることにした。他の車はいない。轍もない。本当に走っても良かったのだろうか。ちょっと不安になる。そろそろ元の道に戻ろうかと思ったが、どこに出口があるか分からない。出入り口は何カ所かあるはずなので、こっち側にもあると思うのだが…。こんな事で時間をとられていても仕方ないので、渚に入ってきた道までUターンして戻ることにした。自分の車の轍をたどると元の出口はすぐ見つかった。やれやれやっと普通の道に戻れた。 photo4

渚のドライブウェー

photo5 次は先程、渚から見えた霧多布岬に行く。灯台のところまで行こうかと思ったが、そこより手前に霧多布岬の展望台があり、この展望台の方が景色が良さそうなので、そちらに行くことにした。駐車場からその展望台に至る道の両側は草原になっており、花がきれいに咲き乱れている。昨日行った以久科原生花園よりこちらの方がはるかに花畑みたいに感じられる。草原の向こうには灯台が見える。絵はがきみたいな光景である。

霧多布岬

photo6 展望台から海が見える。深い青色をした海である。ずーっと向こうの水平線まで見渡すことができる。思わず深呼吸をしてしまう。気持ちいい。

霧多布岬展望台

さて時間はもう12時を済んでいる。お昼ご飯の時間だ。相談の結果、今日は天気がいいので屋外で食べることに決めた。最近はホテルで朝夕を食べていたり、天気が悪かったりで、外で食べるのは釧路湿原に行った日の昼食以来である。
とりあえず、霧多布湿原の展望台まで行くことにする。展望台に到着し、他の車の邪魔にならない端っこに行ってテーブルとイスを広げる。実は端っこの方が海に面していて眺めがよい。駐車場の周りも芝生や花畑がきれいに整備されていて気分の良いところだ。せっかく晴れているのだから、久しぶりにルーフテントに風を通し、寝袋も干してやる。 今までのうっとおしい天気でかなり湿っていたからこの晴天はいい機会である。
本日の昼食のメニューはカップラーメンである。家から持ってきたカップラーメンがまだ残っている。でも太陽の下ではどんなものでもご馳走である。いただきます。
photo8 食事を終え霧多布湿原の展望台に行く。眼下に霧多布湿原の展望が広がる(展望台は小高い丘の上にある)。規模は釧路湿原と比べられるものではないが、それでも緑の絨毯の中を川が流れている様子は美しい。ただ釧路湿原では人工物が一切無かったが、こちらは河口付近に家があって視野の中に人工物が入ってくるのが残念といえば残念。それでもすばらしい景色であることには変わりない。

霧多布湿原

この湿原にも、湿原の中を通れる道があって「MGロード」と呼ばれている。MGとはマッシュグラスの略で、日本語では湿原という意味になる。次にこの道に行くことにする。少し来た道を戻り、左折して「MGロード」に入る。ここは釧路湿原の道とは違い、きちんと舗装してあり、バスでも悠々すれ違える2車線のまっすぐな道である。
周りの景色は、木というものがほとんどなく、遠くまで見通しが利く。このあたりも釧路湿原と違うところであろう。この道を進んで行き、湿原が終わるあたりには、「霧多布湿原センター」がある。ここは2階が展望室になっているが、景色も先程の展望台の方が良く、他には特に目新しい展示物が無かったので、長居をしなかった。
さて、時間は三時過ぎになっている。霧多布を後にして釧路に向かうことにしよう。一旦海岸沿いの道に出て、その道を釧路方面に向かう。走り出して、しばらくすると後の三人は居眠りを始めた(この後は釧路まで、一人起きてのドライブが続くことになった)。
今走っている道は、海岸沿いの道といっても、ほとんど海は見えない。ずっと森の中を走っている感じである。しばらく行くと急に海側が開け、美しい断崖と青い海が目にはいる。「涙岬」という所らしい。 止まろうかと思ったが、皆気持ちよさそうに眠っているので、行き過ぎることにした。すぐにまた海は見えなくなり、道の両側にだんだん人家が増えてきた。厚岸の町に着いたようだ。ここの名物は牡蠣である。厚岸にある道の駅に売っている牡蠣弁当はすぐ売り切れになるほど人気があるらしい。今度来たときは是非食べてみたいものだ。
道は厚岸で国道44号と合流する。ここからは車の量も増えて、のんびり運転というわけにはいかなくなったが、それでも渋滞がないだけ走りやすい。釧路に近づくにつれさらに車が増えてくる。もうまもなく釧路市街だ。このころになってやっと後ろの三人は目を覚ます。母ちゃんは「もうこんなところ?」などと言っている。いい気なものだ。
さてここまで来れば次に心配しなければならないのは風呂と食事と寝るところである。まず風呂を探してみるが、ガイドブックでは見つからない。仕方ない、やっぱりあそこしかないか。あそことはこの前行った、釧路市動物園の前にある「山花リフレ」である。車の数と信号の多さのせいで時間がかかったが、なんとか釧路を突っ切って山花リフレに到着したのは五時頃であった。山花リフレについては前に説明したとおりなので省略するが、やっぱりいいお湯だった。
さて次は食事である。方法としては2つ。ここ(山花リフレ)で食べるか、釧路まで戻って食べるかである。風呂上がりの生ビールを飲んでいた私としては、はっきり言ってまた釧路まで戻るのはめんどくさい。明日の晩には札幌に着いていなければならないのに、走らなければならない距離が増えてしまう。以上の理由で今夜の食事は山花リフレに決定した。
山花リフレの中の「はなしのぶ」というレストランに行く。色々料理はあったのだが、結局カツカレーとハンバーグ定食としょうゆラーメンというどこでも食べられるようなメニューを頼んだ。久しぶりにこんなものが食べたかったのである。ラーメンが子供達の注文であるのは言うまでもない。
このころになると、今晩泊まるところも決心がついていた。ここである。といっても山花リフレに宿泊するわけではない。山花リフレの駐車場で寝るのである。こういうところは警備員が常駐し、治安がしっかりしているので野宿も安心である。こう決めてしまうと後は何も考える必要がない。とにかくゆっくり食事をするだけである。ワインなども頼んだりしてちょっと贅沢な雰囲気を味わう。
食事が終わったのは八時半頃である。もう何もすることはない。明日は早朝からどれだけの距離が走れるかが勝負である。そのためには早く寝た方が良い。車を駐車場の隅っこの邪魔にならないところに移動する。横を見てみると、同じ事を考えている車がもう一台あった。福山ナンバーのワンボックスカーだが、そちらの内部はキャンピングカーになっているようである。どちらにしても仲間がいることは頼もしい。カールーフテントを広げて中に潜り込む。
いよいよ明日の晩は札幌か。旅が終わりに近づいている実感がわいてきた。明日はどこに行こうか。札幌の近くにいいところはあったかな。まあ明日考えるか・・。お休みなさい。

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